
「SCP-122-JPの問題の多いメイド喫茶」 は"mary0228"作に基づきます。
http://scp-jp.wikidot.com/scp-122-jp
この作品はCC BY-SA 3.0ライセンスの下で作成されています。
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンス
当作品は『SCP-122-JP 問題の多いメイド喫茶』、及び、『運命の巻戻士』をクロスオーバーさせた、個人によるファンアート(パロディ作品)です。
ファンが楽しむことを目的とした作品であること、ご理解の上、閲覧を願います。
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ガチャガチャガチャガチャガチャン!! ガシャン!! ガシャン!!
大量の食器が割れる音。それは、クロノによって行われたことだった。
スマホンの叫び声の最中、クロノは、ターゲットのテーブルへと駆け出した。そうして、両腕をテーブルにべったりとくっ付けると、そのまま横にスライドさせて、力任せに料理を根こそぎ床へと叩き落としたのだ。そして、同様のことをアカバのテーブルの上でも行う。
クロノらしいのは、それを行う直前、『ごめんなさい』と言って、料理や、料理を作った人、材料の生産者への謝罪を呟いたことだろう。
「とりあえず、これでもう料理は……、えっ……?」
アカバの目の前の料理を破壊しつくしたと思った直後、振り返ると、ターゲットは再び、食事をしていた。新しい料理は、即座に提供され、別の従業員が清掃を行っている。まるで、コーヒーを溢してしまったのでちょっと掃除をしています、くらいの調子で、事が運んでいるのだ。
「いやですわ、お坊ちゃま、おいたが過ぎますわ。さぁ、お席にお着きになって」
従業員が、クロノに微笑み掛ける。
「く……、クロノさん……、これは……、まだ10回目とはいえ……、今回に限っては諦めた方が……。それに、あの異常な食事を摂り続けたら、アカバさんの精神がどうなるかも……」
二人での任務の苦しいところを突かれてしまった。
どんな苦しみや絶望も、自分が味わう分には自己責任で何度でもリトライする気概を持てるクロノであるが、この難解で未知の食事に対し、アカバの精神が、場合によっては命が、どうなるか分からないとなると、流石のクロノとて迷いが生じる。
そうして、迷いを生じさせている間に、ターゲットの死亡時刻は刻一刻と迫っている。
「クロノさん!!」
しかし、
「やれることは全部やる!! ……おいアカバ!! このじゃあじゃあ星人!!」
諦める事なんて出来ない。それはアカバだって同じであろう。
クロノは、彼なりの悪口を吐きながら、食事を続けるアカバに殴り掛かる。ようやくアカバが顔を上げる。恐ろしい事に、アカバは無言でクロノを殴り返すと、また食事に戻ってしまった。
「そんな……、クロノさんの声も届かないなんて……」
しおしお……、と、落ち込んだ声のスマホンが、低空飛行で漂っている。それでもクロノは諦めない。
「あの!! この店は、一体、何を提供しているんですか!? オレ、友達を迎えに来たんです!!」
心強さを感じるクロノの語調に、スマホンも、今一度、従業員の目線の高さまで浮上する。
「そうです!! この店の料理は異常です!! 何もない冷蔵庫から料理が出てくるなんて……!!」
「お坊ちゃま……」
声を荒げるクロノに、他の従業員たちが集まってくる。
「答えてください!! この店の料理は何を使っているんですか!?」
お帰りなさいませご主人さまっ! 今日も無事のご帰宅何よりです! お帰りなさいませ。お帰りなさいませ。おカエりナサイませ。ハートフルカフェへようこそ! できたてほやほやのお料理、お坊ちゃまの為にお作り致します。#DIV/0! いってらっしゃいませご主人様。ハートフルカフェで、私たち妖精さんが、ご主人様の為にお料理をご提供いたしますっ! 真っ赤なハートの雪降トマトジュースですね、かしこまりました。星降る夜のキラキラジンジャーエールですね、かしこまりました。さぁお坊ちゃまもご一緒に、モエモエキューン! さぁ、私たちの魔法で、お料理がもっとおいしくなりましたよ! あwせdrftgyふじこlp 食べれば食べる程、また欲しくなっちゃうんですよ! コマンド?
「……ッ!!」
それは約1.5秒間のこと。
クロノを取り囲んだ従業員、十数名の顔面の表情筋が、皆一様に異常な速度で動いた。笑ったり、悲しんだり、怒ったり、悩んだり、そんな様々な顔が、たった1.5秒の間に高速で繰り返さたのだ。CGのバグのように。そして、その口からは、通常の人間であれば聞き取れないような高周波音が発せられていた。何か異常な音が聞こえた程度にはクロノの耳は人並外れている。そうして、AIであるスマホンに至っては、完全にその文言の解析に成功していた。
「クロノさん……、この人たちは……、別の組織で作られたアンドロイドなのか、はたまた、実在しているように見えるだけで、本当は立体映像の類なんじゃ……、いいえ! そんな優れた技術が、この時代に存在する訳がありません! でも、だったら……」
「考えても無駄だスマホン。とにかく、おれまで食事をする訳にはいかない。……すみません、入る店を間違てしまったみたいで、おれたちは帰ります」
「いやですわお坊ちゃま、ここは私たち妖精とお坊ちゃまのお屋敷なんですよぉ~。さぁ、すぐに妖精さんのダンスが始まりますっ! お坊ちゃまもご一緒に!」
「あの……っ!」
「クロノさん! お出掛けします、と言ってください!」
「へ……?」
「いいから!」
「お出掛けします。えっと……」
よく理解しないまま、クロノがそう言うと、従業員は残念そうに首を傾げた。
「かしこまりました……、ご帰宅お待ちいたしておりますね。いってらっしゃいませ」
そうして、なんとか店を出られたものの、ターゲットもアカバもまだ救出出来ていない。すぐにでも作戦を考えて、二人の救出をしなければ……、それを悠長に考えている暇もなく、クロノは周囲の異変に気が付いた。
人がいない。
来た時にはそれなりに人通りがあった。その上、あれから時間が経過して、時刻も夕方。本来であれば、これからどんどん人が増えるところの筈だ。それが、誰一人、通行人がいない。
「次から次へと、おかしなことばかりが起こるな……」
人のいない繁華街というのは、案外と不気味なものだと思っていると
意識はそこで途切れた。
※
ピコン……ピコン……
電子音が、ゆったりと響いている。かいだことのある、特有の匂いに、クロノは眉をひそめながら目を開いた。
病室だった。壁際の質素な椅子に座り、背を壁へと預けていた。その異常事態に、クロノは咄嗟に立ち上がると、少し離れた場所にアカバが同じように椅子に座っていた。病室の小さなデスクの上には、スマホンが横たえられている。
「おいアカバ! スマホン!」
病院であることは分かったが、クロノは、つい声を荒げて二人を呼ぶ。二人はすぐに目を覚まし、そして、クロノ同様、この異常事態に混乱を隠せぬのだった。
簡単に情報共有をしたところ、スマホンもクロノと同程度の記憶しかなく、アカバに至っては、あの店に入り、食事を口にして以降の記憶がないということだった。
記憶がない、それはすなわち、巻戻士にとって死を意味する場合があるが……、今回に限ってはそれとは全くの別ケースであろう。何故ならば……、
「この人……、■■■■■さんだよな……?」
そう、この病室には、ターゲットである■■■■■が、ベッドに横たわっている。点滴や呼吸器など、さまざまな医療器具が取り付けられており、先程から聞こえている音にしても、その器具の音である。スマホンがデータベースと照合してみても、栄養失調に対しての適切な治療であるとのこと。
そして、時間を見遣れば、死亡時刻をとっくに通り過ぎている。
「おかしい、おかし過ぎる……」
「はい、ですが、クロノさん、ターゲットは無事救助出来ました。何が起こったかは分かりませんが、一度本部に戻りましょう。ぼくが意識を失っていた間の録画がある筈なので、本部に解析してもらえれば、きっと」
「そうだよスマホン! そのデータ、今、再生出来ないのか!?」
「いえ……、それが、何故かロックが掛かっていて、ぼくにも外せないんです。でも、本部であれば……」
「クロノ、わしもスマホンに賛成じゃ、ターゲットは無事に救出出来た。他に負傷者も出ていない。クロノ、お前の道義にも反しないじゃろう」
「………分かった」
渋々、という様子ではあったが、クロノたちは任務完了として、巻戻士本部へと戻るのであった。
※
SCP-■■■■-JP - 運命の巻戻士
アイテム番号:SCP-■■■■-JP
オブジェクトクラス:Pending
特別収容プロトコル:SCP-■■■■-JPは、現在のところ収容されていません。
SCP-■■■■を用い、SCP-122-JPの出現軸に到着・収容に成功した際、偶発的に発覚した存在です。
説明:SCP-■■■■-JPは、その全容を特定出来ていません。
組織として存在し、所属する個体の一つ一つが、時間を巻き戻すことが可能であり、人間を超える身体能力を保有していると予測されます。
接触した個体は三つ。
SCP-■■■■-JP-1 - 十代半ば程度の人型
SCP-■■■■-JP-2 - 十代半ば程度の人型
SCP-■■■■-JP-a - スマートフォン型。解析の結果、合成音声であることが認められました
この内、SCP-■■■■-JP-1は、非常に協力的な個体です。
一方、SCP-■■■■-JP-2は、やや威圧的な態度を取る個体です。
SCP-■■■■-JP-aは、SCP-■■■■-JP-1の指示に常に従順であり、容姿の違いからも、この二つの個体が、組織内で立場の異なる個体であることが確認出来ます。
以下は、財団エージェントとSCP-■■■■-JP-1のやりとりの映像記録です。
エージェントは衣服に据え付けた超小型の隠しカメラで撮影をしています。
+インタビュー記録 ■■■■-1
日付:■■■■/■/■
対象:SCP-■■■■-JP-1
<記録開始>
エージェント:やぁ、突然の申し出にも関わらず、協力してくれてありがたいよ。
SCP-■■■■-JP-1:いえ……。
エージェント:状況がよく分かってない、って感じかな。
SCP-■■■■-JP-1:そうですね、本当に何が何だか……。ですが、貴方がたがクロックハンズでないことは理解しました。それから、あの異常な店についても詳しいと聞いて、ぜひ協力出来ればと思いました。おれは、あの店内にいた■■■■■さんを助けたいし、仲間のアカバも助けなきゃいけない。
エージェント:なるほど。協力は、我々としても助かるよ。アカバ、というのは、SCP-122-JP内で食事をしていた子のことかな。
SCP-■■■■-JP-1:えすしーぴー……?
エージェント:ああ、あの異常な店の呼称だと思ってくれれば。ところで、君にも名前はあるのかな。
SCP-■■■■-JP-1:はい、おれは、時空警察特殊機動隊のクロノといいます。2087年から、■■■■■さんを救助する為にやってきました。えっと……、この眼帯の下のリトライアイで、時間を巻き戻すことで、不慮の事故で亡くなってしまった方を助けるんです。今回は、えっと、SCP……。
エージェント:あの店とか、適当に言ってくれたらいいよ。
SCP-■■■■-JP-1:あの店にいた■■■■■さんが、あの店の食事を摂取することで栄養失調となり、その後、死亡してしまうことを特定しました。だから、あの店で食事をするのを止めさせたいと思っているのですが……、その方法をご存じですか?
エージェント:結論から言うと、その方法を我々は持っているよ。
SCP-■■■■-JP-1:!? 本当ですか!? よかった……、じゃあ、■■■■■さんも、アカバも、助かるんだ……。
エージェント:その方法はあるんだが、それには少しばかりコストが掛かってね、勿論、君の言う通り人命は最重要事項だ。
SCP-■■■■-JP-1:何が言いたいんですか……?
エージェント:なに、もう少し君の話を聞かせてもらいたいということだよ。
その後もSCP-■■■■-JP-1は、エージェントの質問に答え、SCP-■■■■-JPについて、いくらかの情報を得られました。
時間を巻き戻すこと、人型でありながら、明らかに人間を越える身体能力であること、これらの危険要素はあるものの、SCP-■■■■-JP-1は、その力を人命救助にのみ使うことを最後まで訴え、■■■■■の救助についても詳細に語りました。そして、SCP-■■■■-JP自体が、同じ志の元に動いている、という主旨の発言もありました。
過去に発生した大きな災害・事件・事故の内、死亡者が不自然にまで少ない、または、死亡者が一人もいなかったものについて、どのようにして救助に至ったかの説明もあり、それらは、一般に開示されていない詳細な情報と一致しました。
また、現在に至っても、SCP-■■■■-JPによる被害報告は届いていないことから、SCP-■■■■-JP-1、SCP-■■■■-JP-2、SCP-■■■■-JP-aを収容することは、SCP-■■■■-JPとの対立を伴う危険があると判断。SCP-■■■■-JPの全容が明らかとなるまで、情報収集することとなりましたが、優先度は高くないものと判断されます。
SCP-■■■■-JP-1、SCP-■■■■-JP-2、SCP-■■■■-JP-aは、■■■■■と共に、必要な情報を聴取した後、Bクラス記憶処置を施し、解放しました。その後、解放先の病室で目を覚ましたSCP-■■■■-JP-1、SCP-■■■■-JP-2、SCP-■■■■-JP-aが、存在ごと消えたことを確認しました。
END
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